Pain - Publication Highlights (Japanese)

論文ハイライト

 

>> 痛みの研究と治療法のディスカバリー

 

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慢性的な痛みに対する、依存性が無く個別化された治療法の開発は急を要しています。神経障害性、侵害受容性、炎症性の痛みの複雑なメカニズムの研究は盛んに行われていますが、これらの研究の多くは動物モデルが使用されています。動物モデルの種による違いや倫理的な懸念、また、患者間の症状の差など課題は山積しており、創薬における安定性に優れ予測可能な in vitro 系アッセイが必要とされています。Maestro プラットフォームは、世界中の研究者により、革新的な幹細胞モデルの生成、個別化治療の評価、治療ターゲットの特定などに使用されています。本項では、Maestro が、痛みとその治療の研究に使用された論文の1部を紹介します。


Multi-electrode array of sensory neurons as an in vitro platform to identify the nociceptive response to pharmaceutical buffer systems of injectable biologics

Eaton M, Que Z, et al. Pharmaceutical Research. (2021) 

緩衝液の成分は、注射部位の痛みの原因となり、患者の適合にも影響を及ぼすことがあります。本研究では、in vitro マルチエレクトロード (MEA) アッセイを構築し、緩衝液に曝露された脊髄後根神経節 (DRG) 感覚ニューロンを用いて侵害受容機能を評価しています。

 

ハイライト: 

  • MEA アッセイにて緩衝液に対する侵害受容反応が評価され、ハイスループット環境における侵害受容器キャラクタライジングの第一歩が示された。
  • 4 種類の一般的な注射用緩衝液のうち、クエン酸溶液により DRG の活動が顕著に上昇した。
  • クエン酸の濃度を低下させることにより、DRG 感覚神経ニューロンにおける発火頻度が減少した。同様に、注入物質に対する痛み緩和の可能性も示唆される。

 

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Derivation of peripheral nociceptive, mechanoreceptive, and proprioceptive sensory neurons from the same culture of human pluripotent stem cells

Saito-Diaz K, Street JR, et al. Stem Cell Reports. (2021)

本論文では、ヒト多能性幹細胞から、侵害受容器、機械受容器、及び固有受容器の3種のサブタイプへの分化プロトコルが実証されています。また、これらのプロトコルが、家族性自律神経不全など患者固有の疾患モデル化に応用されることが示されています。

 

ハイライト:

  • ヒト多能性幹細胞を用いたシンプルな分化プロトコルにより、DRG の機能を有する末梢感覚神経培養が効率的に作成された。
  • 作成された感覚神経培養は、電気的な活動を有し、感覚受容器作用薬などの刺激に対する反応を示した。
  • 家族性自律神経不全患者から得られた iPS 細胞由来感覚神経細胞において、疾患フェノタイプが再現された。

 

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Human spinal organoid-on-a-chip to model nociceptive circuitry for pain therapeutics discovery

Ao Z, Cai H, et al. Analytical Chemistry. (2022)

本研究において開発された spinal organoid-on-a-chip デバイスは、ヒト侵害受容ニューロンや脊髄後角介在ニューロンの生物学的機能をより適切にモデル化し、信頼性の高い in vitro スクリーニングへの応用の可能性が示されています。

 

ハイライト:

  • 脊髄後角介在ニューロンと感覚ニューロンを組み入れたヒト幹細胞由来感覚脊髄オルガノイドを作成するプロトコルが開発された。
  • 3D プリントで作成された organoid-on-a-chip デバイスは、マルチエレクトロードアレイ (MEA) との組み合わせにより、スクリーニングへの応用が可能である。
  • 侵害受容性モジュレーターによる痛み治療の可能性が、MEA にて示された。

 

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A role for translational regulation by S6 kinase and a downstream target in inflammatory pain

de la Peña JB, Kunder N, et al. British Journal of Pharmacology. (2021)

本論文では、マウス脊髄後根神経節 (DRG) を用いてキナーゼ伝達経路の役割を探求し、炎症誘発による痛みの原因を特定しています。

 

ハイライト :

  • 炎症メディエーターにより、神経発火が増加し、機械刺激及び熱刺激に対する感受性も上昇した。
  • mTOR シグナル伝達経路の S6 キナーゼ 1 により、DRG ニューロン内の c-Fos、及び DRG の活動における炎症反応をが抑制された。
  • S6 キナーゼ経路、或いは c-Fos へのターゲッティングが、新しい痛み調節治療法の開発につながる可能性がある。

 

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Inhibition of sodium conductance by cannabigerol contributes to a reduction of dorsal root ganglion neuron excitability

Ghovanloo M-R, Estacion M, et al. British Journal of Pharmacology. (2022)

本論文では、カンナビロール の非依存的な鎮痛特性が調べられています。カンナビロール (CBG) は、CNS ニューロンにおける電位依存性ナトリウム電流(Nav1.7)を遮断することにより、鎮痛剤として作用する可能性があります。

 

ハイライト :

  • CBG は、Nav1.7 のピークコンダクタンスを減少させ、非活性状態からの回復を遅延させた。
  • マルチエレクトロ―ドアレイ測定において、CBG の添加により、DRG ニューロンの興奮性が減少した。
  • CGB の Nav1.7 に対する阻害効果は、痛み治療への有望なアプローチとなり得る。

 

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